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リベロのルールとその特殊性

こんにちは。夏が過ぎ涼しくなりましたね。

フライング後のモップ掛けの回数、大幅に減ってきたのではないでしょうか。

嬉しいことではあるのですが、いよいよ1年も終盤か・・・、と少し寂しさを感じている管理人であります。

さて、10月は何の月でしょうか??

そう!我らがVリーグの開幕の月であります!!

開幕日は男女とも21日の土曜日のようですので、お時間ある方はぜひ観戦に行ってみてください (男子: 東京、女子: 仙台)。

本日から10月ということで、新しく記事を投稿しようと思いました。今回のトピックは「リベロ」、すなわち漫画「ハイキュー!!」で言う西谷くんにスポットライトを当てたいと思います。

「リベロ」、このポジションの認知度が初心者においてどの程度なのか、僕には全く見当はつきません。ただ、全く知らないという方はもちろんのこと、知っているとか聞いたことあるという方でも、詳しいルールを知っている方は少ないのではないかな、と個人的には思っています。今回はそのルールと、バレーボール、ひいてはスポーツ界におけるリベロの特殊性について語ります。

まずはリベロのルールについてです。嘘を書くわけにもいかないので、バレーボール競技規則から引っ張ってこようと思ったのですが、あいにく日本語版がウェブで手に入らなかったので、英語版からリベロのルールに特徴的なものをいくつかここに載せたいと思います。後で説明を入れますので、英語部分はすっ飛ばしてもらって大丈夫です。では、いくつかルールを紹介していこうと思います。

  1. Each team has the right to designate from the list of players on the score sheet up to two specialist defensive players: Liberos.

  2. The Libero player(s) must wear a uniform (OR JACKET/BIB FOR THE REDESIGNATED Libero) which has a different dominant colour from any colour of the rest of the team. The uniform must clearly contrast with the rest of the team.

  3. He/she is restricted to perform as a back row player and is not allowed to complete an attack hit from anywhere (including playing court and free zone) if at the moment of the contact the ball is entirely higher than the top of the net.

  4. The Libero is allowed to replace any player in a back row position.

  5. He/she may not serve, block or attempt to block.

  6. A player may not complete an attack hit when the ball is entirely higher than the top of the net, if the ball is coming from an overhand finger pass by a Libero in his/her front zone. The ball may be freely attacked if the Libero makes the same action from outside his/her front zone.

  7. Libero Replacements are not counted as substitutions.

  8. The regular replacement player may replace and be replaced by either Libero. The Acting Libero can only be replaced by the regular replacement player for that position or by the second Libero.

  9. Other Libero replacements must only take place while the ball is out of play and before the whistle for service.

こんなところでしょうか。全部はもちろん載せていませんが、特徴的なところは大体書いたような気がします。では、ひとつずつ簡単に説明していきます。

①各チームは「守備職人」、リベロを登録する権利があるよ。

②リベロは他の選手とは違う色のユニフォーム (ゼッケンとかでも可)を着てね。

③リベロは後衛のどの選手とも代われるよ。

④リベロはアタックとかの攻撃的プレーはどこからでも禁止だよ。

⑤サーブを打ったりブロックしたり、ブロックを試みてもいけないよ。

⑥リベロが、アタックラインより前で、オーバーハンドトスで上げたボールを、ネットより高い位置でアタックしてはいけないよ。

⑦リベロの交代は選手交代には数えないよ。

⑧コート上のリベロは、最初に変わった選手もしくは第2リベロとしか交代できないよ。

⑨リベロの交代は、ボールアウトの間かつ審判の笛が鳴るまでに行わないといけないよ。

ざっと訳すとこのような感じでしょうか。

リベロはいわゆる「守備職人」と言えるポジションで、後衛のプレーヤーのどの選手とも交代できることができます。そしてその交代は無制限である、という特権付きです (細かい規制があるにはありますがここでは割愛します)。逆に言えば、リベロは後衛の選手としか交代はできず、ローテーションして前衛に行く時には、もとの選手と交代する必要があるということです。

リベロのコンセプトは「身長などフィジカルに恵まれない人」の活躍の場を広げよう、ということですので、アタック、ブロックなど全ての攻撃的プレーが禁止されています。これを認めてしまうと、守備を捨て攻撃特化の選手をリベロ起用するチームが出現することは容易に想像がつき、リベロのコンセプトとは真逆の事態が起きてしまいますね。

リベロの交代は、得点が入ってから審判の笛が鳴るまでに行わなければならず、ラリー中に交代を行うことはできません。また、入れ替わって出た選手としか交代できません。例えば、6番の選手に代わってリベロが入ったとしたら、リベロが前衛に来て交代するときには6番の選手しかコートに入れません。 (リベロに代わって7番の選手を入れたりするのは反則です。)

上で言うと、細かい説明が必要なのは⑥でしょうか。以前のコラムで、バレーコートにはアタックラインという前衛と後衛を分ける線が、ネットから3mの位置にあることを説明しましたね。リベロがアタックラインよりも前の前衛エリアでオーバーハンドパスで上げたトスを、アタッカーがネットより高い位置で打ったら反則、ということですね。アンダーハンドパスなら反則はありませんし、アタックラインより後ろならオーバーハンドパスでも大丈夫です。ただし、勘違いされてることが多いのですが、そのトスをネットより高い位置で打ってはいけないということであって、打たずに普通に相手コートに返すことは反則ではありません。前衛エリアでトスを上げた瞬間に反則、ということではないんですね。また、この制約はリベロだけであり、他のプレーヤーには適応されません。

さあ、字面をつらつら追ってもわかりにくいので、僕のしょーもない図を用いて具体例で考えてみましょう。

リベロの仕組みはこのようになっています。リベロと交代する選手はチームで決まっており、今回は1,4番の選手としましょう。4番がサーブを打つときは、リベロはサーブが打てませんので、この時はコート上にリベロがいない状態となってます。4番のサーブが続く限りリベロはコートに戻れません。そして、4番のサーブが終わって相手にサーブ権が移った時に、次の笛までに4番の選手と交代します。

さあ、試合が進むにつれてローテーションしていきますね。ローテーションは以前の記事で書いたように時計回りです。ローテが進み図の真ん中下の状態となったとしましょう。リベロは前衛にいることは不可能なので、4番と交代します。先程述べたように、リベロは入れ替わった選手としか交代できないので、4番としか交代できません。1番のサーブということは、結局左上の状況と一緒ですね。1番のサーブが続く限りリベロはベンチで待機しており、サーブ権が相手に移った瞬間に1番と交代するのです。

ちなみに、図ではアタックラインが書いてありますが、アタックラインからエンドライン (コートの一番後ろの線、ネットから9m)の間がリベロ交代エリアです。この6mゾーンを通過して交代しないと厳密に言えばルール違反であり、これを守らないとと審判に怒られます。なので、面倒くさがらず正式なゾーンを通過して交代しましょう。

長々説明してきたリベロですが、良い選手を良い起用法で使えば、かなり有効な戦術として機能します。ですが、日本語訳①で示した通り、あくまでも各チームはリベロを使用する「権利」を有しているだけであり、決して必ず使用しなければならない、というものではありません。人数不足のチームであったり、リベロより交代選手の方がレシーブ力が高い場合は、リベロを採用しないこともあります。だからこそ、リベロはチームの誰よりもレシーブ力の向上、強化を求められます。

また、交代が無制限ということは、図でもお示しした通りコートに出たり入ったりを何度も繰り返します。コート外にいる時はベンチで監督やコーチと話をして、コート内に入る時はその戦術をコート内に伝える、いわば伝令のような役割も果たします。このように、リベロはレシーブをはじめ様々な役割を持っており、非常に特殊なシステムであることがお分かりいただけましたでしょうか。

最後にスポーツ界におけるリベロの特殊性について、個人的な考えを述べたいと思います。スポーツにおいて、体格が才能であることは言うまでもありません。スポーツをしている方なら、センスや技術は高いのに体格的に恵まれず苦労している選手を何人も見かけていると思います。これは部活動レベルから世界レベルまで、全てに共通する悩みだと思います。

スポーツは、基本的にフィジカルエリート (そのスポーツに向いてる体格)が有利であるのは自明の理で、そこにはどうしても超えられない壁が存在します。バレーボールも、リベロ制を導入前は大型選手のみにスポットライトが当たっており、レシーブ力が高い選手の役割は途中交代の守備固め程度のものでした。しかし、リベロ制の導入により、身長が低くてもレシーブ力が高ければレギュラーとして活躍することが可能となったのです。

このように、いわゆるフィジカルエリートでない選手に活躍の場が与えられる制度について、革新的だとは思いませんか。どのスポーツにおいても、フィジカルのディスアドバンテージを補って活躍する選手は一定数います。しかし、レシーブ専門という限定とは言えども、ルールとしてこのような、ある種救済措置のような仕組みを持つ競技は、バレーボールしか存在しないのではないでしょうか。もちろん、リベロが救済措置なんて言うと怒られますし、自分としてはそのような考えは一切ありません。バレーボールという競技を成り立たせる、重要なピースであることは間違いないと考えています。

いかがでしたか。リベロの特殊性、そしてそこから生じる役割などを理解していだだけたでしょうか。これからVリーグが始まりますし、中継自体は少ないかもしれませんが、もし視聴する機会があったらリベロに着目してみてください。ありがとうございました。

ハマー


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